完全復刻版『新寳島』購入
2009年 03月 03日
『完全復刻版 新寳島』が数日前に発売されたので、試験の帰りに買ってきました。
まさか、本当に出ていたとは…。
自分が買ったのは2000円(税込)の通常版で、箱と解説書『新寳島読本』が付いています。
学生にはギリギリ買える金額でした。
今回の復刻版には、「通常版」と「豪華限定版」(7980円(税込))があり、後者には習作『オヤヂの宝島』、絵本『タカラジマ』、『新寳島』ボツ原稿の複製が付いています。
『オヤヂの宝島』は以前、『手塚治虫漫画全集』DVD-ROM版(定価:12万6000円)の特典として単行本になったことがありましたが、『オヤヂの宝島』欲しさにこれを入手した人は殆どいなかったと思われますので、今回2度目の単行本化でようやく一般人にも手が届く感じでしょうか。
小学館クリエイティブの特設ページはこちら。
自分は、大型の漫画専門店で平積みされていたのを買いましたが、帰りに他の一般の書店を覗いてみても『新寳島』は全く見つからず。『T・Pぼん』のときも同じでしたが、この手の復刻モノは一般書店での入手に苦労します。
早速箱から出してみると、美しい『新寳島』の姿が。
「ピカピカの藤子不二雄ランド(Aランドのことです)」が出たときにも圧巻されましたが、今回の「ピカピカの『新寳島』」の迫力は、もはや異様な感じです。
自分は、本作がトレス復刻されている『ジュンマンガ』を持っているので、本作(オリジナル版)は初読ではありませんした。ですので、『まんが道』で漫賀や才野が感じていたような衝撃は感じなかったのですが、『ジュンマンガ』で縮小掲載されたものと比べると、迫力は違ってきます。
冒頭の、失踪する車~船に乗るシーンまでのスピード感は凄いものだと思います。
解説書『新寳島読本』には、藤子両先生の言葉も再録されていました。
この冊子によると、昭和22年中に発行されたものだけでも、『新寳島』には7種類のバージョン違いが存在しているらしく、興味をそそられます。
後の再版のひとつ。ローマ字の「S」の文字が「くるくるっ」となっている特徴的なものです。
他に、海賊版の『ピート君漂流記』などという裏バージョンも存在…。
次に、気になった点を一つ。
本を開いて、冒頭いきなり驚いたのが、タイトル「冒険の海え」。
「あっ、ちがう!!」
『ジュンマンガ』のトレス復刻版、研究誌等に掲載されている図版、テレビで紹介される原本などで見られるタイトルは「冒険の海へ」なのですが、今回の復刻版、つまり昭和22年1月30日の初版では、「へ」の字が「え」になっていました。
復刻版では、一部で旧字体や旧仮名遣いが見られますが、さすがにこれは誤字ですかねぇ…。
こちらは、『手塚治虫の『新宝島』 その伝説と真実』掲載の図版。
この図版の元になったのは昭和22年7月の版(「改訂版」と呼ばれているもの?)だとのことで、その時点では「へ」に変わっていたことが分かります。
『ジュンマンガ』トレス復刻版。
唯一、正式に復刻されたものということで、『まんが道』や、『学習まんが人物館 藤子・F・不二雄』など、多くの書籍で用いられてきた図版は、このバージョンがベースとなっています。
上の2枚の画像では「冒」の文字の下半分が「月」になっていましたが、「目」に修正されています。
昭和20年代当時、後の方の版ではこうだったのか、トレス復刻の際に修正したのかは不明。
原本と『ジュンマンガ』版では、よく見ると細かい部分がかなり違っていました。原本の印刷の都合による、タッチの荒い部分などが、後者ではかなり修正されています。
原本(左)と『ジュンマンガ』版(右)の比較。ピートくんの体型、犬の目つきなどが全然違います。
いかにも「なぞりました」という線の原本と比べると、『ジュンマンガ』版のタッチはシャープな感じで、個人的には後者の方が好きです。
特にターザンに関しては、『ジュンマンガ』版(右)で「おにいちゃん」くらいの歳だったのが、今回原本(左)を見ると、思いっきり「おっさん」でビックリしました(笑)
原本のターザンの顔を描いていたのは酒井七馬先生です。
また、漫画全集のリメイク版『新宝島』での手塚絵のターザンは、更に若くなっています。
なお、各サイトで「宝」の旧字体の表記が「寳」と「寶」の字が混在していますが、『新宝島』では前者が正解。