アニメ『ドラえもん』主題歌映像考
2009年 11月 28日
『ドラえもん』帯番組時代1年目の放送を全話収めた『ドラえもん タイムマシンBOX 1979』が発売されました。勿論自分は買っていません(3万なんてムリです)。
DVDが買えれば色々なレビューを書きたいところですが、このままでは悔しいので、代わりに今回はDVD発売まで「幻の映像」だったこれらの主題歌をご紹介します。
(…というより、これくらいしかDVD発売に関連して書ける記事がない)
まず、今回『タイムマシンBOX』の発売で注目されていた点の1つとして、帯番組版オープニングと日曜放送版の初代エンディング『青い空はポケットさ』(これまで未ソフト化)が収録されるかどうか、ということがありました。
↑帯番組版初代オープニング『ドラえもんのうた』
帯番組版オープニングは『ドラえもんのうた』版(初代)と『ぼくドラえもん』版(2代目)の2種類があるのですが、共通した特徴として、スタッフ等のクレジットもオープニング中に全て表示されている点(帯番組版にはエンディングが存在しなかったため)、前者の特徴として、時間の都合のためか「アンアンアン―」が1回で終わる点が挙げられます。
帯番組版オープニングはこれまでに発売された映像ソフトには未ソフト化でしたが、『ドラえ本』にスチールが掲載されたり、『ドラえもんのうた』版が本放送素材らしき映像がテレ朝アニメ特番で放送されたり、『ぼくドラえもん』版は'06年にYahoo!で行われた『大人のためのドラえもん特集』で配信されたりと、本放送以来全く露出がなかったというわけではありません。
『大人のための―』では歴代オープニングのノンテロップ版が配信されていましたが、帯番組初代オープニングのみ「原版紛失」を理由に公開が行われませんでした。
よく考えてみますと、『ドラえ本』掲載のスチールも、帯番組版初代オープニングのみテロップ入りのものが載っていましたので、永らくノンテロップ版は所在不明だったのでしょう(プリントを起こすのやテレシネが面倒だっただけなのかもしれませんが)。
しかし、今回のDVD収録のオープニングは、2種類共にノンテロップ版なのだそうです。
あれ…?原版あるじゃないすか…。
↑帯番組版2代目オープニング『ぼくドラえもん』(ノンテロップ版)
帯番組版オープニングは初代・2代目共にテロップが入ることを意識した画面構成となっていますので、テロップがないと上画像のように画面がガラ空きとなり、拍子抜けしてしまいます。
この点が今回の『タイムマシンBOX』の残念なところだったのではないでしょうか。
また、帯番組版初代や日曜放送版(風船で飛行するもの)、金曜版初代(のび&ドラがタケコプターで飛行)のオープニングでは、終盤の「制作 テレビ朝日 旭通信社 シンエイ動画」のテロップが入るところでオレンジ画面や赤画面になります。
ですが、ノンテロップ映像には当然テロップがありませんので、オープニングの終盤は何も表示されないオレンジ(赤)画面の映像となってしまいます。日曜放送版に至っては赤画面が10秒近く続くことになりますので、実に不気味です(笑)
↑テロップ入り(左、中央)、ノンテロップ版(右)
帯番組版オープニングの次に収録が期待されていた、日曜放送版の初代エンディング『青い空はポケットさ』は、残念ながら今回も未収録。
DVDの主旨が「帯番組版を全話収録」であると考えますと、日曜放送版のオープニング&エンディングは不要ということになります…が、折角ですから収録していただきたかったところです。
日曜放送版は当然ながらオープニングも未収録でした(こちらは既発のビデオ等に収録されていますが)。
↑日曜放送版初代エンディング『青い空はポケットさ』(ノンテロップ版)
『青い空はポケットさ』のエンディングがソフト化されない原因として「ノンテロップ版フィルム紛失のため」…という噂がありますが、『ドラえもん』のビデオやDVDの主題歌は基本的にノンテロップ版フィルムを元に収録するという方針のようですので、ノンテロップ版紛失の噂が事実であれば今後の収録もやはり難しいかもしれません。さすがに放送時のテロップ入りのものは残っていると思いますが…。
画像は現存が怪しいノンテロップ版の映像(海外放送されたもの)ですが、吹き出しの中にテロップが入るという、テロップ合成を前提とした構成ですので、ノンテロップ版がDVD化されても楽しみが半減してしまいます。
ちなみに、以前発売のビデオに収録されていた主題歌映像の大部分も本放送素材とは異なり、ノンテロップ映像にビデオ用テロップを合成して新たに制作されたものです(後述)。
◆Part.02:『ドラえもん』テロップ考
次に、『ドラえもん』主題歌映像の本放映版とビデオ版の比較を行います。
以下の記事は以前作りかけたたまま放置していたものなのですが、いい機会ですので今回合わせてご紹介します。
帯番組版以降、『ドラえもん』は基本的に2話(初期は3話)を1回分として放送されています。
ビデオ化の際には「1回」の放送作品がバラバラになり、本放送とは異なった組み合わせで作品が収録されるわけですので、当然ながら、各回スタッフのクレジットがあるエンディングを、本放送と同じ状態で収録するわけにはいきません。今回は、そのような「本放送とは異なる主題歌映像」をご紹介しましょう。
画像はエンディング『ぼくたち地球人』のもので、左画像が本放映のエアチェック、右画像はビデオ収録バージョンです。
ビデオ版の歌詞テロップは本放送のものと同様ですので、ビデオに収録されているのは完全なノンテロップ版ではなく、「スタッフのテロップ無し/歌詞テロップのみ焼き込みのフィルム+ビデオスーパー」の映像です。
こちらはオープニングですが、本放送(左画像)と比べると、ビデオ(右画像)では歌詞テロップも含めてテロップ全体が作り直されています。
このオープニングでは本放送の段階で作者名は既に「藤子・F・不二雄」表記ですので、作者名を修正するためにテロップを入れ直したわけではなさそうですし、テロップをわざわざ作り直して意味があるのか謎です。
ビデオでも本放送と同様のフィルムが使用された例として、日曜版オープニングの例があります。しかしこの場合「原作 藤子不二雄」のテロップにマスクがされ、無理矢理「藤子・F・不二雄」に修正されているため非常に不自然な映像となっています。
ビデオ『ドラえもんのびっくり大百科』、『―2』など、『ドラ』TV版としては比較的初期発売のビデオに収録されているエンディング『まる顔のうた』は、ドラミ役・よこざわけい子さんの表記が旧表記の「横沢啓子」になっていたり、テロップが焼き込みである点から(日曜版)本放送時の映像かと思いましたが、'80年頃の放送にしては「旭通信社」の表記が「ASATSU」になっていたりと不自然ですので、ビデオ用に作られたものなのでしょう。
…と書いた後に調べてみますと、よこざわさんが名義を変更したのは'95年、ビデオはパッケージの「テレビ放送15周年記念」の触れ込みから発売が'94年頃ですので、ギリギリ「横沢啓子」名義時代の発売。ですので、テロップの「横沢啓子」の表記は何も不思議ではありませんでした…。
ということで、結論としてこのエンディング映像はビデオ用のものです。
いて、ビデオに収録される機会が多い気がする『まる顔のうた』ですが、ビデオの元となったノンテロップのフィルムは1つではなく、何種類か存在しているらしいことが分かりました。
画像はどちらも『まる顔のうた』の映像ですが、左画像は「歌詞テロップのみ焼き込みの映像+ビデオスーパー」、右画像は「(歌詞も含めて)ノンテロップの映像+ビデオスーパー」となっており、元にしたフィルム自体が異なるようです。
また、後者では、なぜかラストに「Produced by TV Asahi SHIN-EI ANIMATION」の文字が焼き込まれています。まさか、海外からノンテロップフィルムを取り寄せたのでしょうか…?
更に続いて、『ドラえもん』以外の作品でのテロップ違いの状況をお伝えします。
『パーマン』よりオープニング、左から本放映版、ビデオ版、テレ朝チャンネル再放送版。
画像では見えにくいかもしれませんが、歌詞テロップの字体が本放送版ではゴシック体たのに対し、ビデオ版ではポップ体のようになっています。ビデオ版は'90年からのリリースだそうですので、作者名表記も当然「藤子・F・不二雄」。
テレ朝チャンネル版は、テロップで「音楽 たかしまあきひこ」と表示するところを「菊池俊輔」と誤記したり、エンディングで三重晴三くんの「ハル三」を「ハルミ」と間違うなど、テロップで致命的なミスを犯しているために評判があまり良くありません。現在GyaO!ストア(旧:Yahoo!動画)で配信されている『パーマン』の主題歌もこのバージョンです。
本放送版ではオープニングの冒頭に「藤子不二雄劇場」の画面があり、パーマンバッジの音が流れるのですが、ビデオや再放送ではカットされています。これは『藤子不二雄劇場』枠で放送された他作品でも言えます。
第514話以降は『藤子不二雄劇場』からの放映枠移動で『藤子不二雄ワイド』枠に組み込まれることとなりましたので、「藤子不二雄劇場」のタイトル部分はカットされていたと思われますが、資料がないのでこのあたりの詳細は不明です。近年のBS朝日での再放送では、こちらの素材が使用されたそうです。
『怪物くん』からエンディング、左が本放送版、右がテレ朝チャンネル版。
本放送ではテロップは焼き込みでしたが、テレ朝チャンネルの再放送版ではノンテロップ映像+ビデオスーパー。エンディングの映像には歌詞を表示するためのスペースがあるのですが(歌詞表示部分は下絵が帯状に欠けている)、テレ朝チャンネル版では歌詞が表示されないためスペースが無駄になっています。手書きのテロップがいい味を出しているのに残念。
…ということで、非常に長くなりましたが、今回の特集は終了です。
次回以降は、殆ど需要はないと思いますが(笑)モノクロ版『オバケのQ太郎』、『パーマン』、『怪物くん』の調査結果を順次アップしていこうと思いますので長い目で見てやってください…。
豆情報…某動画サイトに『怪物くん』の第5回Bパート『フランケンの映画カントクの巻』('68.5.19放送)が丸々アップされていましたので、ご興味のある方はお早めにどうぞ。アップされた方ありがとう…(!)
◆番外編:『怪物くん』オープニングの謎
シンエイ版『怪物くん』のオープニングについて以前から気になっていたことがありますので、ついてに書かせていただきます。
上画像は一般的に「前期オープニング」と知られているものなのですが、某動画サイトにあった本放送最終回に録画したとされる(投稿者・談)オープニング&エンディングを見ると、後期オープニング(巨大な手と戦うもの)ではなく、なぜか前期使用のはずのこちらが使用されていました。
テープに続けて録画されていた(投稿者は当時、アニメのオープニング&エンディングを収集していた模様)エンディングのクレジットには『さようなら怪物くん(前)』と『さようなら怪物くん(後)』とあり、続きに後番組『フクちゃん』の番宣も録画されていましたので、少なくともエンディングに関しては最終回のもので間違いありません。
オープニング中に放送回の手がかりになりそうなものはありませんでしたので、最終回でも前期オープニングが使用されていたのか、あるいは当時、前期オープニングの後に最終回のエンディングを録画してしまったのか…非常に気になっています。
詳細をご存じの方、ご教授ください!
おまけ:『怪物くん』提供画面、映画『怪物くん デーモンの剣』&『忍者ハットリくん ニンニン忍法絵日記』テレビ放送('82.10.04)予告、番組終了時アイキャッチ