旧『オバQ』雑学 実写版とパイロットフィルム
2008年 05月 24日
八月二十二日、日曜、午後七時三〇分、それまでの『ポパイ』に代わって『オバQ前夜祭』が三二局ネットで放送された。映画ではなく、実演である。火星人みたいなヌイグルミのオバQがハーリ・ヤノシュの曲にあわせてバレーを踊った。視聴率十八・四パーセント。藤子不二雄作品の初のアニメ化作品である、『オバケのQ太郎』(モノクロ版)は'65年8月29日に放送が開始されました。
―1977年発行『藤子不二雄 二人で少年漫画ばかり描いてきた 戦後児童漫画私史』より。
しかし、当時の新聞ラテ欄を見てみると、放送第1回のサブタイトルは『パパは忘れん坊』と『犬が怖いよう』の2本。第1回ですし、Qちゃん誕生の物語を放送しそうなものですが、見るからに、いきなり普通のエピソードから始まっているようです。
ですが、Qちゃん誕生の物語は放送されなかったというわけではなく、放送第1回に先駆けること一週間前、8月22日に「第1話」に当たる特別番組が放送されていました。
当時の朝日新聞ラテ欄によると、番組名は『バラエティーショー 「オバQ誕生」』。
書籍やサイト等で『オバQ前夜祭』と記述されているのを見かけます。
このタイトルの違いに関してですが、約1年後の'66年7月10日に同じくTBSで放送された、『ウルトラマン』の宣伝番組のタイトルが『ウルトラマン前夜祭「ウルトラマン誕生」』であることから、こちらの正式タイトルは『バラエティーショー オバQ前夜祭「オバQ誕生」』が正しいかと思われます。
その内容ですが、番組自体は舞台劇で、オバQが卵から生まれる…という第1話に相当する内容を、実写で放送していたそうです。分かる人には分かると思いますが、前述の『ウルトラマン前夜祭』のような雰囲気の番組だったと考えられます。
画像は『オバQ』放映開始時の地方巡業企画『オバケのQ太郎 こども大会』のもの。『バラエティーショー』の舞台もこんな感じだったのでしょうか。
当時、番組をビデオテープで保存するということは少なかったそうですので(生放送番組は大抵フィルムではなくビデオ録画)、もし番組がフィルム録画でない生放送だったなら、映像が現存する可能性はかなり低そうです。
追記:『オバQ誕生』放送当日の神戸新聞に、番組内容が少し紹介されていました。
◇オバQ誕生(バラエティーショー=朝日後7・30)
二十九日から始まる漫画「オバケのQ太郎」の紹介編で、オバQことオバケのQ太郎が、オバケの国からおりてきて人間世界に住みつくようになるまでのいきさつを描いている。
安孫子先生曰く「火星人みたいなヌイグルミ」の実写オバQですが、それらしき写真がありました。
左写真は上野動物園で撮影されたもの。番組の宣伝だったのでしょうか?
恐らく番組で使用されたものと同じ着ぐるみかと思われます。意外に馴染んでる!?
今となってはチャチな着ぐるみですが、当時としてはそれなりの出来ではないでしょうか?
上の写真では着ぐるみ全体を確認することができませんが、こちらのサイト様では全身の写った写真が紹介されていました。
……。
全身を見ると結構不気味…。
「火星人」という例えもよく分かるような気がします。
『バラエティーショー オバQ前夜祭「オバQ誕生」』 DATA
■放送日時:1966年8月22日 TBS系19:30~20:00 『不二家の時間』枠
■制作:TBS(東京ムービーが関与しているかは不明)
■原作:藤子不二雄
■出演:林家三平、曽我町子、関敬六、南風洋子、海野かつを 他
■声の出演:Q太郎/曽我町子
■スポンサー:不二家
■視聴率:18.4%(全国?)
■収録会場:杉並公会堂(?)
※モノクロ放送
内容について
■公開撮影もしくは生放送で、ホールで行われた実写舞台を放送したものだが、Q太郎だけは着ぐるみで演じていた。
■舞台劇には少なくともQ太郎、正ちゃん、パパ(?)が登場。
■Q太郎が卵から生まれるシーンがある。
■Qちゃんは複数登場(?)
■オバQがハーリ・ヤーノシュの曲でダンスをした。
■林家三平、関敬六、南風洋子、海野かつをの4氏は進行役(?)
■映像は、現存すれば放送用ビデオ、もしくはキネコフィルム(放送局が映像を画面撮りしたもの)の形で保存されていると思われるが、ビデオ収録の場合は放送後に消去された可能性が大。
■Part.02 研究:旧『オバQ』パイロットフィルム
旧『オバQ』には、アニメ放映に先駆けて制作されたパイロットフィルムも存在していました。
『オバQ』パイロットフィルムに関しましては、後日作成のこちらの記事もご覧ください。
『オバQ』パイロット版に関して、藤子先生の著書『藤子不二雄 二人で少年漫画ばかり描いてきた 戦後児童漫画私史』にはこう書かれています。
五月のはじめ、テレビ漫画『オバケのQ太郎』に関する第一回の顔合わせがTBSで行われた。スポンサーは不二家、代理店は博報堂、制作プロは東京ムービー、担当プロデューサーはTBS編成局副部長の遠藤氏。この会議でオバQの国際化プランが検討された。つまり制作費の補填のためにオバQを無国籍ものに仕立てて海外輸出をねらおうというものである。これには僕たちは大反対した。このパイロット版ですが、「BSの藤本先生の追悼番組で一部が流された」との証言があります。
追記:映像を確認しました。
これが実際に放送されてたらすごかったでしょうね…。
輸出前提で制作された『がんばれ!マリンキッド』やタツノコプロ作品のようなアメコミ風になったのではないでしょうか…?
では次回。
画像出典
■朝日新聞マイクロフィルム
■『別冊宝島360 レトロおもちゃ大図鑑 オタクのルーツ!駄菓子屋おもちゃ2000点!!』
■『完全保存版 藤子・F・不二雄の世界』