~華麗なる私家本の世界~
2008年 08月 29日
昔の文学作品等を中心に、「私家本」と呼ばれる本が数多くあるのをご存じかと思います。
これはファンや研究会が、自分たちが楽しむため、自費出版で独自に作品を復刻・再録した、いわゆる同人誌のようなもの。著作権的には微妙かもしれませんが…。
その中には手塚作品等の漫画も比較的多く、その中には少数ですが藤子作品の私家本も存在し、稀にオークション等でその姿を見せています。
今回はあまり一般に出回ることのない、これらの本たちを(ごく一部ですが)ご紹介いたします。
■豪華愛蔵版『UTOPIA最後の世界大戦』
藤子先生のデビュー単行本、『UTOPIA最後の世界大戦』。
昭和29年・鶴書房発行の原本は、手塚治虫『新宝島』と「日本一高い漫画単行本」の座を争うくらい貴重なものです。復刻版は'81年に名著刊行会から、また'91年には藤子不二雄ランドから出版されていますが、それとは別に私家本も存在していました。
本は豪華愛蔵版の箱付き、ハードカバーの上製で、限定10部の発行だったそうです。
外箱には名著刊行会版のカバーが、本体には原本出版当時の赤本?のカバーが使われています(原本と比べると表紙が明らかに色調が赤に偏っています)。
また、帯にはキャッチコピー
「最高の技術で華麗に再現―末永く 伝えたいこの財産…書斎に、秘蔵の一冊。」
とあります。背中部分には、なぜかのび太の顔も。
この本は、Yahoo!オークションにて2万円で落札されました。
余談ですがこの数ヶ月前には、ヤフオクに本物の鶴書房版『最後の世界大戦』が出品されていました。これにもびっくり(また記事にしようと思います)。
■発行時期:'00年~頃(?)
■発行部数:限定10部
画像:Yahoo!オークションより転載
■藤子不二雄ランド Vol.302『レインボー戦隊』
以前オークションに出品され、掲示板を賑わせたこともあるらしく、藤子ファンには有名な私家本の1冊です。
本の内容は、日本初の戦隊アニメである『レインボー戦隊ロビン』の原作で『少年マガジン』に掲載された『レインボー戦隊』(風田朗/スタジオ・ゼロ原作)全13話を収録したもの。初出誌からの復刻で、掲載時のカラーページも全て再現されていたとのこと。
装丁は「藤子不二雄ランド」を模していて、本家F.F.ランド(第1期)はVOL.301『UTOPIA最後の世界大戦』で完結しましたが、本書は「VOL.302」をの名乗っています。F.F.ランドと同じく「セル画つき」とあり、実際にはに「セル画風のカラー頁」が付いているそうです。
発行部数は限定5部との噂がありますが、数のわりにはヤフオクに出品されていたり、まんだらけの目録に載っていたり、ネット古書店のサイトで2回販売されていたり、はたまた古書店のショーケースで見た、古本市の目録に載っていたなどの情報もあり、実際にはこれ以上の数が発行されたのではないかと思われます。
取引価格ですが、Yahoo!オークションでは8万5000円、ネット古書店では5万円/6万円の取引例があります。まんだらけ目録で、F.F.ランド全巻美本セット(75万円)の中に、「見本版『海の王子』第1巻」とともに、「おまけ」としてひっそりと混じって出品されていたこともありました。
『レインボー戦隊』は大都社から出ていた唯一の単行本が絶版となっていて、スタジオ・ゼロの合作ということで権利関係の問題も微妙でしたが、現在では「石森作品」に分類されているらしく『石ノ森章太郎萬画大全集』から全1巻が出版されています。
ただし『萬画大全集』はセットでの予約販売限定ですので、単品での入手はかなり困難ですが…。
■発行時期:'90年代半ば~'00年頃(?)
■発行部数:限定5部(?)
■『仙べえ』+SF短編
合作作品ということで、
大都社発行・スターコミックス版収録の16話と、双葉社・パワァコミックス『ドビンソン漂流記』に同時収録されている2話を合わせると、単行本に収録されているのは18話。未収録作は2話ですね。
オマケとして、SF短編『老年期の終り』と『ひとりぼっちの宇宙戦争』の初出版も収録。
付録には『仙べえ』のオリジナルしおり、携帯クリーナー、ティッシュ、さらには「煎餅」等、色々なオマケが付いていたようです。やたら凝ってるなぁ(笑)
■発行時期:ここ数年(?)
■発行部数:不明
画像:まんだらけ より転載
■京都漫画研究会 復刻シリーズ(4)『夢トンネル』
『夢トンネル』は、安孫子先生が『サンケイ新聞』に'83年から1年間連載していた作品です。月曜~土曜の毎回1頁ずつの掲載で全301話。「時間」をテーマにした、A作品には珍しいSFの要素も入った作品です。
本書は京都漫画研究会が、当時の新聞を纏めて「同人誌」として出版したもので、2500円頒布されました。各サイト様によると、この本が届いたのは安孫子先生のお誕生日である3月10日だったそうです。ファンの心理を見事に分かってます。
発行部数も多いので「私家版」と言えるのかは分かりませんが、一応ここに分類しました。
この『夢トンネル』。自分は読んだことがありませんが、ネットでの反応を見る限り、かなり面白い作品のようです。古本市等で何回か見かけるのですが、結構なプレミア価格が付いているので中々手を出すことができません…。
市場価格は3000円~5000円くらいでしょうか。
■発行時期:2003年3月10日
■発行部数:限定1000部
■発行:京都漫画研究会
■頒布価格:2500円
他にも紹介予定だった本は少しあったのですが、発行数の少なさ故の露出の無さ故に、詳細な情報が分かりませんでしたので、今回の紹介はこの4冊だけに留めました。
では次回。